コラム|ゼロ化

【AIエージェント開発者インタビュー】“人の可能性を解放する”戦略的求人票作成AIエージェントのこと、開発担当者に聞いてみた

作成者: ゼロ化編集部|Mar 15, 2026 11:51:28 PM

こんにちは、編集部です。

採用競争が加速する中、求人原稿の質は採用成果を左右する重要な要素のひとつです。しかし、募集部門と人事部門の認識ギャップ、担当者の経験に依存した求人票作成、媒体ごとの調整工数など、課題が複雑に絡み合っています。

これらの課題を一気通貫で解きほぐす「戦略的求人原稿生成AIエージェント」があると聞き、開発者に設計思想から運用のリアルまで、話を聞きました。

本取り組みは、パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社の人事担当者からの相談を元に、社内の開発担当者が人事部門と連携しながら設計・実装を進めたものです。

<このひとに聞きました>

 

パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社

ビジネストランスフォーメーション事業本部 DX統括部 データサイエンス部

田中 裕子 さん

2023年にパーソルプロセス&テクノロジー(現パーソルビジネスプロセスデザイン)へ入社。各企業の生成AI活用の支援に注力。AI研修のサポートやAIエージェントの構築を通じて、現場業務に即したAIの活用推進に取り組んでいる。実務に寄り添った分かりやすいAI活用を大切にしている。エンジニア/コンサルタント。

 
- まず、なぜこのAIエージェントを作ったのか、背景から聞かせてください。

端的に言うと、求人原稿の「質」と「再現性」を安定させたかったんです。採用市場が厳しくなるほど、原稿の一文一文が応募率に効いてきます。けれど現場では、部門と人事の認識ギャップが生まれたり、担当者の勘や経験に頼りがちだったり、媒体ごとに書き直す手作業が重かったりして、常に一定以上の品質を保つのが難しい。みんな真面目に頑張っているのに、成果の揺れが生まれてしまう状況を変えたかったんです。

- 確かに、複数担当者が毎回同じクオリティで、というのは難しいですよね。

そうなんです。しかも、良い原稿って文章だけの話ではない。前工程の判断が9割くらいを占めることもあるんです。その条件は市場で優位性があるのか、誰に向けて何を伝えるのか、構成は読み手の動線に沿っているか。そこを人事の“暗黙知”で乗り切ってきたのが、現場のリアルでした。だから、その思考のプロセスを丁寧に分解して、AIに移植しました。単なる文章生成AIエージェントではなく、フローごと支える“戦略の伴走者”にしたかったんです。

- 具体的には、どんなAIエージェントですか?

求人原稿づくりを根拠ベースで一貫支援するAIです。募集条件の検証、訴求の設計、マスター原稿の作成、媒体ごとの最適化まで、前工程から掲載直前までをつなぎます。人の判断を残すべき要所と、AIが自動化すべき要所を整理して、迷いを減らす設計にしています。

 
- どういう手順で使うのか、使い方の流れを教えてください。

まず、募集条件のチェックから入ります。市場データや過去の採用実績と照らし合わせて、年収やスキル、働き方条件などの競争力を可視化します。「この条件で本当に応募が来るのか」「何を調整すべきか」など論点を整理して、募集部門との対話を“感覚”から“根拠”へ変えるんです。ここで、募集部門と人事の認識ギャップを埋める下地ができます。

 
- ここが弱いと、後の工程がすべてかみ合わなくなりますからね。

その通りです。次に、確定した要件をもとに、候補者像を複数のペルソナとして自動生成します。それぞれのペルソナに対して、「どんな価値観に響くのか」「どのポイントを強調すべきか」を整理し、候補者目線に立った訴求ポイントとメッセージを作成します。
たとえば「挑戦環境に惹かれる人」には裁量や成長機会を前面に、「安定志向の人」には制度やサポート体制を丁寧に、のようなイメージです。
ターゲットが曖昧だと、どれだけ丁寧に書いても刺さりにくいので、まず“誰に届けるか”の輪郭をクリアにする。このプロセスで、読み手の立場に立つ視座がチーム全体に共有されるのもメリットです。こうして、「誰に向けた求人なのかが曖昧な原稿」ではなく、ターゲットが明確で刺さる表現を安定供給できるようになります。

 
- 前提をしっかり明確にしてから、原稿を書くのですね。

はい。募集要件、ペルソナ別の訴求、過去の成功した求人票、最新の市場トレンドなど、非構造の情報を統合して、応募につながる “構成の要点”を押さえたマスター原稿を生成します。単なる情報の寄せ集めではなく、内容の一貫性とストーリー性を保ちながら、見出しのリズムやCTAの位置、視線誘導まで職人的に整えます。見えない整合性が応募率に響くので、細部まで徹底的に磨きます。

 
- すごい(笑)。そして最後は媒体に合わせてリライトできる、と。

各媒体の文字数制限、入力項目、表現ルールに合わせて自動でリライトします。手作業の書き直しがなくなって、内容のブレも防げます。スピードを出しながら、媒体ごとの特性を活かして最適に掲載できる。つまり、効率と品質が両立します。

 
- 仕組みとして、どうやってそれを再現できるようにしたんですか?

ふたつのアプローチで進めました。ひとつ目は「人事の暗黙知の形式知化」です。熟練の採用担当者が無意識にやっている思考や判断をインタビューと原稿の分析で構造化し、プロンプト設計と業務フローに落とし込んでいきました。属人化していたノウハウを、誰でも再現できる手順にするイメージです。ふたつ目は「独自データ × LLM」の活用です。自社に蓄積された成功求人票のデータと最新の市場調査のデータを組み合わせ、汎用の生成を“実務仕様”に寄せる。これで、一般的な文章生成の限界を越えて、現場で使える精度に持っていきました。

- 業務の設計も肝ですよね。どこをAIに任せ、どこを人が判断するのか、という。

おっしゃる通りです。単に生成AIを入れて終わりではなく、業務全体の設計が要でした。工程ごとに「AIがやるべきこと」「人が最終判断すること」を切り分けて、“現場で使える形”になるように整えています。業務コンサルの視点とエンジニアリングの視点を往復しながら、設計・実装・運用までつないでいく。見た目は「求人原稿をAIで作る」というシンプルな話に見えても、実態は現場の業務を深く理解したうえでの業務設計の知見とAI・エンジニアリングの技術をすり合わせていく泥臭い取り組みです。そして最後にもうひとつポイントは、募集条件の調整から、訴求設計、原稿作成、媒体最適化まで、4つの機能がシームレスにつながるようにしたことです。作業がタスクごとに中断することなく、一気通貫のフローとして実現しました。だからこそ、現場で実際に使われるものになりました。

- 現場の反応はどうですか?

ポジティブな声が多いです。特に、募集条件の根拠が見えることで、部門との議論が早くなる。「この年収だと市場では厳しいから、このスキルの必須度を調整しませんか」といった対話が、データをもとに建設的になる。ペルソナごとの訴求設計も、自分たちの視点に抜けがあったことに気づくきっかけになると言われます。

- 導入の成果、数字でいうとどうですか?

求人原稿作成にかかる時間が約23%削減できる見込みです。ただ、数字以上に大切なのは、時間の使い方の質が変わること。担当者が単純作業から解放されて、部門との対話、候補者とのコミュニケーション、採用ブランディングの磨き込みなど、付加価値の高い仕事に時間を使えるようになる。品質の標準化も進むので、採用ブランディングの向上にも寄与しており、組織として“勝てる型”を育てられているんです。

 
- 安全性やガバナンスの設計はどうしていますか?

差別的な表現を防ぐための確認フローを組み込んでいます。情報セキュリティ面でも、データの取り扱いを社内基準に沿って厳密に設計しています。そして、最終判断は必ず人が行う。AIが提案し、人が責任を持って決める設計です。これが、安心して使える運用の土台になります。

- 今後、どんな領域まで広げる予定ですか?

スカウト文の作成や面接設計まで広げることを視野に入れています。求人票だけでなく、採用業務全体を支えるAIへ育てていく。部門と人事、候補者すべての体験をよくするために、戦略から運用までの線をつないでいくイメージです。

- パーソルの「ゼロ化」との関係も教えてください。

「ゼロ化」は、パーソルビジネスプロセスデザインのDX/AXサービスで、生成AI、AIエージェント、RPAなどを組み合わせて人の工数を限りなくゼロに近づける考え方です。「採用のゼロ化」に限らず、マーケティング、セールス、請求など、さまざまな業務で、棚卸しから設計、実装、定着まで専門人材が伴走します。単なるツール導入ではなく、業務の基盤を整え、仕組みとして定着させて、人が本来注力すべき「判断」「対話」「戦略」に集中できる環境を作る。このAIエージェントは、その思想を体現した事例の一つです。はたらく人の可能性を解放するために、業務の“当たり前”を次のレベルへ更新していく取り組みとも言えます。

- 最後に、読者へメッセージをお願いします。

求人原稿は、作業ではなく「戦略の表現」です。作業はAIに任せて、人は対話と判断に時間を使いましょう。部門との関係性を深めること、候補者と向き合うこと、組織の魅力を言語化すること。そこに人ならではの価値があります。僕たちは、現場の皆さんが笑って働ける未来を、技術で後押ししたい。小さな一歩でも、日々の業務が楽になる方向へいっしょに進めたら嬉しいです。

- ありがとうございました。

本記事でご紹介した「戦略的求人票作成AIエージェント」をはじめ、採用業務を支援する各種AIエージェントは、「採用のゼロ化」のサービスとしてご提供しています。人手不足や業務効率化にお悩みの方は、まずは資料をダウンロードのうえ、導入のイメージをご確認ください。